レヴェナント:蘇えりし者
『復讐』が前面に打ち出されている映画です。
息子の命を奪われ、自らも瀕死の状態で荒野に置き去りにされた主人公。彼にとってみれば、そんな仕打ちに対する復讐こそが死の淵から蘇る原動力となったわけです。しかし敵役にも言い分はあります。過酷な荒野で生き延びるためには、弱者を切り捨てねばならないこともあり、生き延びるためには邪魔するものを排除しなければならないこともある。残酷ではあっても、それが彼にとっての正義なのです。
そしてこの映画は、そんな人間同士の異なる価値観などどうでもよいといっています。荒々しく、人の生存を拒む過酷な荒野においては、個々人の正義も復讐も、あまりにか弱いものでしかありません。本作の主演はその荒野自体、過酷でありながらも息を飲むほど美しい、人間たちを取り巻く自然そのものだといっていいでしょう。そして主人公たちは、自らに死をもたらすこの自然を『神』と呼んでいるわけです。
『ビューティフル』までは過酷な物を不愉快なほど過酷に描写することで死を描いてきたイニャリトゥ監督ですが、前作に引き続き本作でも、しっかりと映画としての、エンターテインメントとしてのフィルターを通し、人に死をもたらす大自然を見事な映像美と音響で美しく描き切っています。旋律ではなく音そのものの存在にこだわった坂本龍一の音楽も、環境音と見事に一体化した美しさだったと思います。
大自然の中でどんどん矮小化し、自らの存在を見失っていく白人たち。このあたりはメキシコ人であるイニャリトゥ監督ならではの切り口なのかもしれません。
12/2016
#747
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