ヴィンセントが教えてくれたこと
普通は出会わないような二人が育む友情を描く『奇妙な友情もの』とでもいった映画があります。
本作では借金を抱えたアル中の老人と孤独ないじめられっ子が、偶然隣同士に住むことになるところから物語は始まります。この手の映画は、出会いを通じて問題を抱えていた両者が成長し、問題を乗り越えていくというのが一般的な展開だと思うのですが、本作は一味違っているような気がします。
本作のテーマは成長より『気づき』。人が生きていくうえで本当に大切なものは何かということに気がつくことの大切さ。そしてその大切なものは、成長から得るものではなく、本来人の心の中に存在したはずのものなのです。
本作に登場する多くの登場人物は、決して楽な生活を送っていません。それぞれが苦しみながら生きていますが、それらは決して特別な苦しみではなく、世界中の多くの人が同じような悩みに苦しんでいることでしょう。そして人はそんな苦しみに毅然と向き合うだけの強さを、いつも持てるわけではありません。
だからこの映画は逃げてしまうことを否定はしていません。ヴィンセントは映画が終わるときも、まだ昼間から酒を飲んでいます。しかしそんな弱い人でも、心の中に大切なものを持つことはできるのです。そしてこの映画では、そうして心の中に大切なものを持ち続けている人のことを『聖人』と呼んでいるのです。
聖人は静かな教会や修道院の中にいるのではなく、苦しみに満ちた人生の喧騒の中にこそいるのだと、この映画は言っています。
52/2015
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