ジュラシック・ワールド
(『ジュラシック・パークIII』より続く)
そして『ジュラシック・パーク』から22年。パークは完成し、一日に2万人が訪れる人気テーマパークとして、安全に運営されていた。
しかしその安全を脅かす存在が、ひっそりと生まれていた。バイオテクノロジーにより生み出された、より巨大で、より強力な新種の恐竜。この新種が今回の主役である。
自然を弄ぶ人間の愚かさを描くというシリーズの基調は今回も健在である。より強い刺激を観客に与え、収益を増すことだけを目的に生み出された新種。この新種は人間の愚かさの象徴であるとともに、もう一つ、シリーズが今まで持ちえなかったパニック映画としての一面を生み出す存在ともなった。
この新種は今までの恐竜とは違って生命の理の範囲外の存在である。捕食のために殺すのではなく、楽しみのために殺す。人智を超えたその恐怖は、今までシリーズには存在してこなかった『悪』を感じさせる。そしてその『悪』が、2万人の中に放たれるのである。今までのシリーズの主人公たちが望んで危険に踏み込んでいったのとは異なり、今回はレジャーという日常の崩壊が描かれることとなったのである。ついに『ジュラシック・パーク』がパニック映画となった瞬間である。
そしてこの新種は、恐竜たちにとっても異物であるというのが、本作の非常に優れたアイディアである。人間と恐竜と新種の三つ巴は自然と異物の対立を内包しており、それがクライマックスの感動的な展開に直結しているのである。
4作目にして、ついに究極の『ジュラシック・パーク』の誕生である。未完成な1作目を、それぞれ逆の面から修正した2作目、3作目。それらの苦難の道の果て、本作をもってついに完成である。SF映画であるとともにパニック映画でもある。恐竜対人間でありながら、恐竜も人間も同じ自然の一部である。このフォーマットで描けることは全て描きつくしたような、それほどの高い完成度の脚本である。
同じフォーマットへの4度目の挑戦でありながら、まだまだ新しい感動を生み出すことができる。人の才能というのは、本当に素晴らしいものである。
49/2015
#721
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