ジュラシック・パーク
「スピルバーグ、久しぶりの動物パニック」
当時、とても大きな期待で臨んだ本作だけれども、そんな期待は見事に裏切られた。
『ジョーズ』のサメとは異なり、この映画の恐竜は「悪」ではない。恐竜は人間に蹂躙される自然の象徴であり、被害者なのである。たとえ人を殺してしまったとしても、それは恐竜に責任があるわけでもなく、それゆえ本作の恐竜はそれほど怖くない。
しかしそれは当然のことだったのだろう。原作は動物パニックではなくあくまでもSFであり、テーマは恐怖ではなく人と科学の在り方である。本作の方向性はおかしくはないのだ。しかしそうであるならば、パークを作り上げた人間側を悪として描かなければ物語としての収まりが悪い。この点が欠けているのが本作の散漫さの原因なのだろう。パークの創設者ハモンドは浮世離れした夢を語るばかりで反省の気持ちは弱い。そして彼の部下たちが大勢命を落とす中、自らはなんなく島から脱出する。これでは観客は、この惨事から何も読み取ることはできない。
動物パニック映画としてのスリルもなく、SF映画としての物語性もない。結局恐竜を見るくらいしか楽しみどころのない、とても印象の弱い映画というのがこの作品の感想である。
(『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』に続く)
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