龍三と七人の子分たち
なぜ北野武が、わざわざ『三匹のおっさん』を撮るのか?
予告編を観ての感想は、そんな戸惑いだった。
今は引退している老人たちが、様々な技能を駆使しながら現代の荒んだ世相を正していく。ドラマにもなった有川浩の小説。その二番煎じを、すっかり大物監督になってしまった北野武が創るのはなぜなのだろう。
そして、そんな予想はものの見事に裏切られる。
この映画の老人たちは物事を正したりなんかしない。われわれの現代社会とは明らかに相容れない、大昔の任侠道の世界。そんな異世界からの使者たちが、その異物感を最大限に発揮しながら周囲を破壊していく。その様子を、コメディというよりはコントの集合体として練り上げたのがこの映画だったのである。
その笑いは『コメディ』と呼べるような品のよいものではない。
非常識で不謹慎なあの笑い。親、先生、PTAが眉をひそめるような、あのビートたけしの笑いである。国内外ですっかり映画人としてのステイタスを築いておきながら、このくだらなさは立派である。損壊されていく中尾彬を眺めながら、ある種の感動を覚えたのは私だけではないのではないだろうか。
これを許してもらえること自体が、北野武のステイタスの証なのかもしれない。
27/2015
#696
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