インターステラー
伸びたり縮んだりすることはあっても、決して遡ることはできない。
そんな時間の残酷な特性を、相対性理論を中心に据えて描いたストーリーが絶品です。滅び行く静かな農村での暮らしから始まり、ワームホールの向こう側の峻厳な惑星へ。自らの愛する家族と自らが属する人類という『種』と。果たして守るべきものはどちらなのか。そんな哲学的な命題をどんでん返しが続くサスペンスフルな手法で描いていく。緩急取り混ぜたその演出はお見事としかいいようがありません。
『インセプション』に代表されるように、クリストファー・ノーラン監督は重層的な世界を舞台に複雑な物語を描くことを得意としてきました。そしてそのようなスタイルは、場合によっては技巧に走りすぎて情感が犠牲になるという問題も持ち合わせていました。しかしこの映画では、中心に父と娘の愛情を据え続けることでその問題を解決しています。ブラックホールの特異点の向こう側で、全ての伏線が美しく収束していくその中心にあるもの。それが人類の未来などではなく、あくまでも二人の心の触れ合いであるというところがあまりに感動的で、ただただ泣きながら二人の行く末を見守るしかありません。
ここ10年程にわたって素晴らしい作品を発表し続けてきたクリストファー・ノーラン監督。そんな中でもこの映画の完成度には言葉を失います。あまりに素晴らしい映画は、観る者に打ちひしがれるほどの衝撃を与えてくるのだということがわかります。クリストファー・ノーラン監督の集大成であり最高傑作であり、めったにお目にかかれないほどの逸品です。
72/2014
#660
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