紙の月
銀行内のシーンはスリリングでとてもよかった。
宮沢りえと小林聡美の鬼気迫る戦いも見ごたえ十分だった。しかし彼女を巨額横領に駆り立てた主たる要因である、年下の恋人との恋愛部分のドラマがあまりに酷い出来だ。
それはそもそもが偽物であり空虚なものであったのは確かだ。しかしこの映画における偽物は、偽物だけれどもキレイなものであったはずである。毎日毎日、砂を噛むような味気ない生活を送っていた彼女にとって、彼との恋愛だけが生きている実感を感じられる場であったはずだ。しかしこの映画で描かれる、二人のシーンの温度の低さはなんだろう。
第三者から見れば不毛な関係であっても、彼女にとっては違ったはずだし、そんな彼女の熱狂、その熱さが伝わらなければ、観客は彼女の犯罪に理解が及ばないはずだ。直接的な恋愛描写を組み込んでおきながらも全く二人の熱が感じられない。恋愛部分に関する演出力の欠如が映画全体のバランスを大きく崩してしまっている。
良い部分もあっただけに、また宮沢りえががんばっていただけに、とても残念な仕上がりだ。
70/2014
#658
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント