思い出のマーニー
何が苦痛で、何が不安なのだろう。何が不幸で、何が幸せなのだろう。
世界における自分の立ち位置、その絶対的な評価に迷う杏奈が、マーニーというもう一つの視点を得ることで、自らの相対化を成し遂げるまでの物語。
そこにはアニメ的なギミックもデフォルメもない。躍動感あふれるアクションシーンも愛らしいキャラクターもない。そこにあるのは丹念に描かれた物語だけ。この作品のアニメーションは、あくまでも物語に仕える存在だ。
後半が説明的すぎるきらいがあるし、やや強引にまとまり過ぎた感もある。でも、そんな小さなことが気にならないほど、そこにある多くの女性たちの生き方、そこに描かれる瑞々しい情感は圧倒的だ。ミステリアスでファンタジックで、そして力強い物語の完成度はとても高い。
スタジオジブリが更なるステップアップを図るには、『脱ジブリ』が必要だった。
前作『風立ちぬ』でも感じられたその流れは、ついに本作で大きな成果を生むこととなった。今までのジブリ映画が嫌いだった人にもぜひ観てほしい。今までのジブリ映画が好きだった人には、一本の映画としてこの作品に向き合ってほしい。
『アニメ映画』から『アニメーションによる映画』に。
この映画から日本のアニメーションの新時代が始まることとなるのだろう。
45/2014
#632
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