オール・ユー・ニード・イズ・キル
この映画の原作小説で最も印象的な部分。
それは「想いを寄せる二人が殺し合わなければならない」という、あまりに切ない展開であっただろう。そしてこの小説の唯一にして致命的な欠陥は、この展開に持ち込む筋書きがあまりに強引かつ不自然であったことだ。二人が戦わなければならないというアイディアはとても優れている。でも、その優れたアイディアを生かすだけの構成力も、若干の強引さを読者に感じさせないだけの筆力も、作者は持ち合わせていなかったのだ。
そして映画化にあたりハリウッドの脚本家たちが出した結論。それは「作品の中で生かすことができないならば、どんなに優れたアイディアであろうが切り捨てる」という、実に思い切った、そして全体としての完成度を考えれば至極真っ当な結論だった。『ループ』という基本設定はそのままに。舞台はワールドワイドにスケールアップ。優れた特撮とシャープな戦闘描写で迫力ある戦場を構築。二人を戦わせる必要が無いならば、あえてどちらかを殺す必然性はない。
保守的な選択であったかもしれないけれども、原作以上に説得力があり、かつストーリーに絡むように変更された『ループ』の理論設定をみても、細部にわたってグレードアップするための努力が感じられる。原作のとんがったところは失ってしまったかもしれないけれども、完成度でいえば原作を上回っている。「単にハッピーエンドに置き換えただけ」という一言で切り捨てることはとてもできない、素晴らしい脚色であったと思います。
43/2014
#630
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント