her/世界でひとつの彼女
同時期に公開された『トランセンデンス』は「人がAIのようになる」というお話でしたが、こちらは本当にAIが主役のお話です。
今までもAIやロボットと人間とのかかわりを描いた映画はありましたが、この映画は実体を伴わないネットワーク上のAIと人間との恋愛を描いています。難解な科学的側面はなるべく省略し、あくまでも恋愛に的を絞ったシナリオが秀逸です。主人公が実体のないAIとの恋愛にのめりこんでいくように、観客もヒロインの存在しない恋愛映画に没頭していくことになります。
主人公の冴えない中年男性を演じたホアキン・フェニックスがとてもよい。大半が一人芝居であるため実際の撮影は難しかったと思いますが、そんなことを感じさせない自然さです。そして、もっと素晴らしいのがヒロインであるAI役のスカーレット・ヨハンソンです。エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルドと魅力的な助演女優たちが顔をそろえる中、主人公同様に観客みんなが恋をすることになるのが、顔のない声の出演であるスカーレット・ヨハンソンなのです。
もちろんシナリオの素晴らしさもあるのだと思いますが、姿や表情がなくても声だけで観客に訴えかけることができるという、女優の力のものすごさを実感できる映画です。主役の一人が姿のないAIだということを忘れさせるほど、完成度の高い恋愛映画となりました。そして出会ってはならないものどうしの恋愛が常に悲しい結末を迎えるは、残念ながら恋愛映画のお約束なのです。
41/2014
#628
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