白ゆき姫殺人事件
小説「白ゆき姫殺人事件」の大きな欠点は、小説部分と巻末のソーシャル・ネットワーク部分のマッチングの悪さだった。
巻末のSNS部分によって、そこまでに描かれてきた事実が180度変わってしまうような大仕掛けがあるわけではなく、単にそこまでに描かれてきた物語に別の視点が与えられる程度の存在。であるにも関わらず、それなりのボリュームを読まなければならない。終わってしまった物語に大して付け加えられるものがあるわけでもないのに、それなりの時間付き合わされる読者にとっては、苦痛以外の何物でもない。
そんな問題点を映画版は一気に解決した。現実とSNSの同時進行。小説では難しいそんな当たり前の表現を、いとも簡単に解決してしまうのは映画ならではの力である。そしてそれは、何かをしながら「ながら」で進行していくSNS世界の本質を上手に表現するものでもあった。原作を確実に読み込み、場合によってはその問題点さえも修正してしまう。井坂幸太郎作品を中心に数々の原作もので秀作を連発している中村監督の腕前は本作でも確かである。
また本作では、井上真央をはじめとした女優陣の活躍が光る。裏表のある、ずるくてしたたかで、そしてどこにでもいそうな女性たちの物語。最後に付け加えられたロウソクのエピソードも、湊かなえの特徴である救いのなさに反するものではあるけれども、映画しての落ち着きを考えるととても効果的。ここでの中村監督の「解釈」は的確だったのではないだろうか。
22/2014
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