大統領の執事の涙
世界の政治の中枢で働く主人公の物語だけれども、政治裏話的要素はとても少ない。
そこに描かれているのは、穏やかに真面目に毎日を過ごす黒人一家の物語だ。
たった100年前だけれども、そこに描かれているアメリカの人種差別はとても恐ろしい。そして今のアメリカも、確実にその延長線上にあるというのも、またこの映画は実感させる。
主演のフォレスト・ウイテカーの物静かな佇まいがとてもよい。よいことも、悪いことも。全てを受け入れながら、全ての思い出と共に、毎日歩んでいく姿が感動的だ。状況は一気に好転することはないけれども、それでも昨日より今日はちょっとだけよい世の中になっている。そんなちょっとずつを果てしなく繰り返しながら、人の世は続いていくのだということが実感できる映画です。
この映画のラストは、黒人初のアメリカ大統領が誕生するところで終わります。でも、そのことをもってこの映画に何らかのプロパガンダが含まれていると捉えてしまうことは、この映画の魅力を見失ってしまうことになるでしょう。この映画を観ればわかるはずです。オバマは到達点でも新時代のスタートでもないことが。どんなに人々の大きな期待を背負っても、物事は決して一気に好転したりはしないのだと思います。
それでも、ちょっとずつ良くなっていくことを人々は信じているし、そして願っているのです。
12/2014
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