小さいおうち
裏表のない善良な人々が織りなす人情劇。
山田洋次監督の得意な映画って、そんなある意味単純な映画なんじゃないかと思うのです。
でも「小さいおうち」は全く違うタイプのドラマです。登場人物の誰もが裏の顔を持ち、誰もが心情を明かさない。人間関係の謎は謎のまま、からみ合った糸はからみ合ったまま物語は終わる。そんな物語を山田洋次監督は、お世辞にも上手に撮れたとは思えません。
映画独自のカットは全て物語の複雑性を排し、単純化しようとする意図のあるものばかり。その脚色は結局のところ原作の一番の持ち味を殺すもの。原作の色よりも自分の色を優先しようとしたということなのでしょうか。
また恋愛を描くのがとても下手、というのもこの映画の監督としては致命的です。ここでも原作にはない直接的な恋愛描写をいくつも挟み込んでいますが、それでもなおかつ、二人の熱情がまったく伝わってこないというのは、これはもう不得意なんだろうとしか思えないレベルです。
せっかくの松たか子の『毒』も全く生かせず。『巨匠』というブランドではなく、適材適所で監督は選ぶべきだという見本のような映画でした。
6/2014
#588
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