鑑定士と顔のない依頼人
実に上品で美しい映画です。
姿を現さない謎の依頼人を巡る、人の死なないミステリー。ジェフリー・ラッシュの格調高い演技。セットや衣装などの美術もとてもよいです。
しかしそれも、依頼人が姿を見せてしまうまでの話です。もちろん物語を展開させるために中盤で姿を見せてしまうことは、別に問題はないのです。問題はその展開のさせ方だと思うのです。
本作のオチというのは「華麗などんでん返し」というよりも「強引な大技」なんですよ。この手を使えばどんな不可能な事件でも起こせてしまいます。そしてそんな大技は、上品なこの映画の雰囲気には全くあっていないと思うのです。もちろん『上品さ』自体が伏線なんだと言われればそれまでですが、なんだかもったいない話です。
またミステリーとしてみると、空っぽになった部屋のシーンで全ての謎が明かされているのにも関わらず、そのあと主人公の回想シーンでの種明かしが延々と続くのもマイナスです。せっかく大技ながらもスパッと切ったその切れ味を、自分で鈍らせてどうしようというのでしょうか。この回想シーンがまた美しくて叙情的なのが困りますよねぇ。とても出来のよい蛇足というのは、あった方がいいのでしょうか。ない方がいいのでしょうか。
9/2014
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