エリジウム
なかなか名前を覚えてもらえない監督というのがいる。
この映画のニール・ブロムカンプ監督もその一人。世間は彼を『「第9地区」の監督』と呼ぶ。
デビュー作『第9地区』でいきなり大きな評価を受けたブロムカンプ監督。2作目となる本作では、前作の4倍近い巨額の予算と、マット・デイモン、ジョディ・フォスターというハリウッドの大スターを手にしました。しかしそんな状況に浮かれることなく、己の創りたい映画を追求してきたところが立派です。
混沌とした近未来。技術は高度に発達したものの、差別や格差が色濃く存在し人々を苦しめている。そんな『第9地区』とも共通する本作の世界観は、南アフリカ出身というブロムカンプ監督の内から生まれ出たものなのでしょう。そしてそんな社会的な問題を決して前面に打ち出すことなく、あくまでもSF映画として表現していこうというあり方にも好感が持てます。
SFガジェット満載で娯楽性は高いけれども、スペース・オペラとはひと味違った重さや苦さをもつブロムカンプ監督のSF世界。それは20世紀のちょっと懐かしいSF世界を思わせます。これからも注目していきたい監督です。
76/2013
#555
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