許されざる者(2013)
…『許されざる者(1992)』より続く
このリメイクで注目していたのは「ヒーローを背負っていない渡辺謙が、どのように『脱ヒーロー』に説得力を持たせるのだろうか」という点だ。そしてこの部分を、この映画は巧みに解決しているように思える。
1992年版に限りなく忠実にリメイクされている本作では、エピソードやセリフも限りなく1992年版通りだ。しかし微妙に異なる点もいくつかあり、それらは主人公にまつわる部分に集中している。
ヒーロー性を排し、限りなく人殺しに近づいていた1992年版の主人公と比べて、本作の主人公はわずかにヒーロー性を残している。たとえば「おんな子どもも殺してきた」という部分にも、本作ではさりげなく解釈の余地を与えている。主人公に若干のヒーロー性を残し、わずかな正義を残し、そしてその結果として、映画のラストに『伝説』を残している。
とても現実的でドライな1992年版と比べると、本作は『甘い』かもしれない。でもヒーローではない渡辺謙には、1992年版のようなヒーロー破壊は無理だろうし、また無理にそうしたところで効果があるとも思えない。それならば『脱ヒーロー』は中途半端であったとしても、一般的な娯楽映画としてのカタルシスをわずかに残すという選択肢は、バランス感覚としては悪くなかったかもしれない。
75/2013
#554
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