少年H
一見した印象は『三丁目の夕日』を思わせるが、映画のとしてのテイストは大きく異なる。それは、この映画の一家の行く末には戦争が待っているからだ。
水谷豊という俳優は、どんな役を演じているときでも大体同じだ。この映画の父親も、だからいつもの水谷豊なのだが、それがなかなかはまっている。皆が内心に不安を抱えながらも、その不安を表に出せない時代。皆が何かを隠している時代。そんな中で父親は、息子に誠実に物事を説明する。体制におもねるのではなく、かといって声高に正義を主張するわけでもなく。ありのままの姿と、生き抜く工夫を。そんなどこかさめた父親の姿は、水谷豊にぴったりの役柄である。
この映画で印象的なのは、この父子の会話である。少年Hはたくさんの問いかけを投げかけ、父はその問いから逃げず正面から向き合う。人生にはたくさんの疑問があり、その回答は決して一つではない。そして、そもそも答えがあると保証されているわけでもない。この映画を観る大人たちは、少年Hの問いかけにどれだけ答えることができただろうか。
64/2013
#542
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