さよなら渓谷
芥川賞受賞作家、吉田修一の小説を映画化したものです。
以前映画化となった『悪人』が非常に単調な物語だったことと比較すると、物語にひねりがある分だけ(といっても残念ながらキャッチコピー段階でネタバレされていますが)こちらの方が面白く感じます。
犯罪をテーマとしているとはいっても推理ドラマではありませんので、謎解きのロジックなどを楽しむ要素はほとんどありません。さまざまな登場人物の心象風景をひたすら眺めていくことが、この映画の中心的要素だといっていいでしょう。
ただ、そんな彼らの心情に共感できるかどうかは、これまでの観客の生き方次第。屈折した彼らの想いに共感させるような手助けは一切存在しないため、その程度には極端に個人差があると思います。人によっては共感どころか理解すらできないかもしれません。登場人物への共感に映画の楽しみを求める人には向かない映画かもしれません。
中盤までの先の見えない緊張感あふれる展開から一転、終盤の逃避行の回想シーンは帰着点がわかっている分だけややダレる印象もあります。それでも得体のしれない理不尽な感情に引きずられるようにして生きる彼らの姿。あんなことはあり得ないと、自らの常識だけでは切り捨てられない説得力が、そこには存在したと思います。
53/2013
#531
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