風立ちぬ
スタジオジブリといえば、老若男女が新作を待ちわびる国民的なアニメスタジオだ。
その新作が、理想の飛行機を追い求めるエンジニアの物語を、子供受けしそうなアニメ的なギミックを極力排除して、単なる一本のドラマとして描いたものであったこと。その思い切りの良さには尊敬の念を覚える。
そして、このエンジニアの物語のもう一つの側面。それは物語を通じて吹き流れる『風』だ。
その『風』は決してさわやかなものではない。兵士。兵器。災害。疫病。この映画を覆うたくさんの『死』のイメージ。人々を翻弄するこの映画の『風』は、人が決して逃れられず、そしてつねに寄り添って生きていかなければならない『死』そのものを象徴している。
エンジニアがひたすら追い求める技術。そしてそのエンジニアを取り巻くたくさんの死。この映画の二つの要素が結びつくもの。当時世界最高の機動性能を誇りながらも、その装甲の貧弱さから多数のパイロットを失った零戦こそ、この映画の中心に描かれる象徴としてふさわしいものであるといえるだろう。
アニメ映画から、アニメを使った映画へ。ピクサーやディズニーにも決して負けていない、アニメの将来を見据えたスタジオジブリの本気を垣間見たような気がする。
59/2013
#537
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