二流小説家 シリアリスト
原作小説の魅力はどこにあったのか。推理小説であり、 確かにどんでん返しなどもあるけれど、謎解きのプロットが魅力の中心だったのかと言われると、ちょっと違うような気がするのだ。
そのプロットよりももっと印象的だった部分。それは日本のライト・ノベルに顕著なキャラクター小説的な面白さだったのではないだろうか。
売れない小説家。婚約者にも逃げられた彼が、殺人事件に巻き込まれると同時に突然の『モテ期』を迎えてしまう。事件の関係者であるそれぞれが魅力的で、かつひと癖ある女性たちとの不思議な関係。それらをややアダルトな恋愛描写や残酷描写を織り交ぜながら描く、言ってしまえば『大人のライト・ノベル』的な部分が、原作の一番の面白さだったのだと思うのです。
今回の映画化は、『相棒』を始めテレビでのサスペンスドラマをたくさん手がけきた監督が行いました。だから推理ドラマとしては堅実な仕上がりです。しかし原作ではあんなに魅力的だった主人公を取り巻く女性たちから、びっくりするほど魅力が感じられないのです。
個人的にはこれは致命的。原作の面白さの80%以上が失われてしまったのではないでしょうか。さまざまな女性たちとの関係を通じて主人公が感じたこと、そして乗り越えたこと。女性たちが魅力的に描けていない分だけ、主人公の女性たちに対する想いがまったく伝わってきません。どんなに筋書きの再現度が高くても、原作の一番メインの部分が、情感に訴えてくる要素が、ぽっかりと失われているように強く感じました。
48/2013
#526
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