リアル~完全なる首長竜の日~
原作を大きく翻案することは、決して悪いことではない。
ただそれが主演するキャストありきの翻案だとなると話は別だ。本作の場合、登場人物の年齢や性別の変更が、原作を超えるような新たな物語性を生み出しているようには思えない。つまりは、単に旬の人気スターをキャスティングするための大幅翻案であった可能性が高く、そういう意味では、失敗作に終わってしまう危険性も大きかったと思う。
その危機を救ったのが、一見この原作の映画化には不向きなように思えた黒沢監督が持ち込んだ、お得意のJホラーテイストだというのが面白い。まったくホラー的要素のない原作から一転して、じめじめとした不気味な雰囲気に覆われた本作は、なんともいえない緊張感で観客を引きつける。原作では『インセプション』の駒に相当する役割を担っていた首長竜を、まったく異なるあんな役割で使うというのも全く予想外だった。基本的に綾瀬・佐藤の二人芝居なのだが、ちょっとした脇役が妙に豪華なのも面白い。特に終始妖しい雰囲気を振りまいていた中谷美紀が印象に残る。
原作ファンには期待はずれな映画化だと思うけれども、こんな脚色もあるのかと思って観れば、かなり興味深い映画である。原作のカラーに囚われることなく、映画を自らの色に染め変えた黒沢監督に拍手でしょう。
45/2013
#523
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