くちづけ
まずは、全ての出演者に拍手を送りたい。
なかなか表現が難しい役柄もあるなかで、全員がわかりやすく際だった個性を打ち出し、キャラクター相互間の愛情を感じさせながら、多くの場面では観客を笑わせ、また多くの場面で観客の涙を誘った。全てのシーンが一件の家の中で描かれるこの映画は、映画的なギミックを使う余地が非常に少ない。それゆえに、映画の出来には出演者の演技のよさがストレートに反映されている。
笑いと涙のバランスも秀逸。共同体のぎこちなくも暖かい結びつきと、やがれ訪れる変化と別れ。意外性のある物語ではないけれども、それでも引き込まれていくのは、キャラクターの魅力であり、また映画としてのテンポのよさだろう。
しかし後半は、とても重苦しい映画となる。ここが本題であるから仕方がないけれども、中盤までの軽やかさが嘘のような、全く異なる雰囲気となってしまう。この後半部分において、ここまで全員を魅力的に描いてきたことが仇となってしまったような気がする。いっぽんというキャラクターのここまでの掘り下げが、彼の決断に説得力を持たせるには足りていないのだ。
もちろん彼の選択は許されるものではない。でも映画を観る中で彼の心情に寄り添ってきた結果として、観客にも「そうするしかなかった」と感じさせることが必要だったはずだ。自己の倫理観といっぽんの決断。相反するどちらにも観客を共感させることで、観客の感動はもっと大きくなったのではないだろうか。
42/2013
#520
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