フライト
衝撃的な航空機事故と、その真相解明をめぐるドラマ。
予告編を観ると、そんな映画を思い浮かべるかもしれません。
しかしこの映画では、航空機事故の真相も、事故調査委員会での緊迫したやりとりも、映画の背景でしかありません。映画の中心は一人の男の『依存』からの脱出という、とてもパーソナルで小さな物語なのです。
もともとデンゼル・ワシントンは、正義・高潔・理性といった印象の役柄が多い俳優だった。しかし最近は、犯罪者やアウトロー、そして本作でのアルコール依存症というように、その役柄の幅を広げつつある。本作でも、どうしようもなく弱い男を演じながらも、その演技は迫力がある。一本のミニチュアボトルをじっと見据えるその姿は鬼気迫る。
依存に落ち込むその心理は十分に描けていた反面、依存から彼を引き戻すこととなる周囲との関わりの描写がやや弱かったかもしれない。でも、依存の恐ろしさとその普遍性はしっかりと描かれていた。アルコールや薬物だけではない。何かに依存してしまうその弱さは、きっと自分の中にもあるのだろう。そう思わせるだけの説得力をこの映画は持っている。
一歩間違えば、単なるお説教映画となってしまいそうな主題の映画を、ダイナミックな装飾で包んだこの映画。うわべと内容のスケールの差が、評価の分かれ目となる可能性はあるものの、退屈するような映画でないのは、さすがはロバート・ゼメキス。
18/2013
#496
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