ゼロ・ダーク・サーティ
「関係者からの証言をもとに構成された」
これをどう考えたらいいのか。
①「関係者からの証言をもとに」という設定のフィクションである
公表されている事実に作者の想像を加味して、いかにも事実のように創り上げた映画。
こういう映画は歴史物でよくある。ちょっと昔だとオリバー・ストーンの『JFK』なんかがそうだ。
ただ、たった数年しか経っていない事件をもとにそれをやるのはどうなのだろう。
現実に亡くなった人々の関係者は、こういうフィクションをみてどう思うのだろう。
②ほんとうに「関係者からの証言をもとに」創られた再現フィルムである
この場合、正確には「関係者からの嘘の証言をもとに」ということになる。
それはそうだろう。なぜなら戦いはまだ終わっていないからだ。アルカイダだってこの映画を観るのだから。
もし例えばアルカイダの上層部にCIAがスパイを送り込んでいるとしたら。彼を守るためにCIAはこの映画を欺瞞に使うにきまっている。自分たちに都合のよい真相を世界に広めるために、CIA関係者として証言を行うにきまっている。
「アメリカで国家機密の漏洩問題」などというニュースも、欺瞞の補強以外の何ものでもないだろう。
この場合この映画は、CIAによるアルカイダ欺瞞とアメリカの国威発揚。二重の意味で国の役に立つことになる。国の役に立つことと交換で、そこそこ真実の混じった、でも決して真実ではない証言を得たのだ。そして真実ではないと知っている内容をもとに、真実として映画を創ったわけだ。
どちらの場合であっても、すっきりしない映画だと思う。
純粋に一本の映画として観たらどうだろう。
映画の大部分は拷問と尋問がひたすらリアルに描かれる。映画の中の尋問官が尋問にうんざりしてしまうように、観ている方もうんざりする。この監督の前作『ハート・ロッカー』同様、リアルで退屈な映画だ。
それでもビンラディンの位置が特定されてからは、俄然映画として盛り上がり出すのが救い。やたらと気さくなCIA長官がでてきたり、最新鋭ステルス・ブラックホークがエリア51の空軍基地から飛び立ったり、急に映画的なギミックが目立つようになる。ただディテールが細かすぎて長いんですよ、襲撃シーン。
15/2013
#493
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