007/スカイフォール
ニヒルでありながらも常にウイットを持ち合わせ、逆境にありながらも憎まれ口を忘れない。そんな英国的な人物像が、彼の最大の魅力だと思うからだ。
21作目の『カジノ・ロワイヤル』で提示された、死と暴力に満ちあふれた新たなボンド像。しかし23作目となる本作では、新ジェームズ・ボンドは少し変化を見せ始めた。
それは本作の方向性の影響もあるだろうし、もしかしたらダニエル・クレイグがボンドを演じることに慣れ始めたせいかもしれない。理由はともあれ、本作のボンドは少しだけ昔のボンドを感じさせる。大好きだった、昔のあのボンドの雰囲気だ。
そしてなによりも本作は、とことん『ジェイムズ・ボンド愛』に満ちあふれている。
いや、ボンドだけではない。『007の世界』全てに対する愛情でいっぱいだ。
懐かしさ漂う、あのメインタイトル。
命を落としそうな危険な状況なのに、さりげなくカフスを気にする余裕。
敵のアジトに単身乗り込み、本名で名乗りを上げる相変わらずの大胆不敵さ。
中盤の山場の審問会で、タンカを切るMのかっこよさ。
ボンドがMと一緒にアストン・マーチンに乗ってスコットランドに向かい、自らの過去と対峙するシーンの美しさ。
あらゆる登場人物がボンドに向ける好意、やさしさ。
どう観たってこの映画は、完全に『007賛歌』です。
観る前からなんとなくイヤな予感はしていたけれども、Mを死なせてしまったのはどうかと思った。
でもラストシーンで顔を揃えた3人を見て、これでよかったのかもしれないな、と思う自分もいた。
新しいボンドと、新しいMと、新しいマニペニー。
輪廻転生。
この3人を見て、また昔のような、ジェイムズ・ボンドの冒険が続いていくような気がした。
移ろいながらも、その世界は決して終わらないような予感がした。
そして一番うれしかったのは、6年かかって、やっとダニエル・クレイグのジェイムズ・ボンドが好きになれたことかもしれない。
ほんとうにこの映画は、ボンド50周年記念にふさわしい素晴らしい作品です。
次の50年に向けて、ジェームズ・ボンドは再びスタートラインに立ったのです。
77/2012
#472
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