終の信託
『尊厳死』をめぐる、ちょっと硬派なドラマといった印象の映画です。
でも実際に映画を観てみると、尊厳死を中心にすえながらも、あくまでもストーリーの中心はラヴ・ストーリーなのだと感じました。
それはそれで見応えはありました。役所広司の控えめな好意も、草刈民代の不器用な慕情も、浅野忠信の下衆男っぷりも。
でも、ラヴ・ストーリーとしての盛り上がりがピークを迎えたのかどうかわからないうちに、物語は終盤の社会派問題提起シーンに移ります。
この最後の部分。取調室での草刈民代と大沢たかおの迫真のやり取り。この映画にとっての、この部分の意義がよくわからないのです。
両者の間で、確かに尊厳死の矛盾点を浮き彫りにするセリフが飛び交いますが、同じ事は、ここまでの役所広司と草刈民代のやり取りで十分に観客に伝わっていますよね。
改めて、長い時間をかけて、もう一度繰り返す必要があったのでしょうか。
愛する人の命を自らの手で奪った、あの病院のシーンで十分ではなかったでしょうか。
この映画がラヴ・ストーリーであるならば、あの病院での臨終シーンを映画のピークに持ってくるべきだったと思うのです。尊厳死についても、それで十分に描けたはずだと思うのです。
付け加えられた取調室のシーンは、映画のクライマックスとしての機能を果たせていません。検察官に一方的に言い負かされて、逮捕されて終わりです。
そして、クライマックスのない映画ほど、締まらないものはありません。
69/2012
#465
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