ボーン・レガシー
今までの脚本家が監督になり、上映時間がシリーズ最長となる。
これは、このシリーズにとって間違いなく『凶兆』だ。
旧三部作は、敵味方の陰謀が交錯する複雑なプロットが特徴のようでいて、実は非常にスピーディーでシンプルな追いかけっこが魅力だった。入り組んだプロットを説明不足ぎりぎりまで刈り込んで、その後大流行したクローズアップを多用した格闘シーンを中心に、アクションシーンでたたみかけてくる映画だった。説明よりも行動で。セリフよりも沈黙で。
複雑さをあえて抑えて、ひたすらテンポ優先で突っ走る。そんなシリーズの面白さは、結局のところ脚本のトニー・ギルロイが生み出したものではないことが、この映画を観るとよくわかる。
この映画も、結局の所やっていることは今までと同じ。単なる追いかけっこです。でも、遅いのです。だから上映時間が長いのです。それはなぜか。みんながよくしゃべるからです。
新主人公である今回の暗殺者も、よくしゃべります。自己中心的な印象を受けてしまうほど、自分の気持ちを、自分の目的を、ちゅうちょもなく回りに伝えます。
その、あつかましいともいえる言動とその人物像は、ジェイソン・ボーンと比べてしまうと、あまりに魅力が乏しいように思えてしまいました。
やはり脚本家は言葉をあやつる存在なのでしょう。刈り取ってくれる存在がいなくなってしまうと、結局は語りすぎてしまうのでしょうか。
内容が冴えないだけに、パメラ・ランディを始めとした前作のCIA幹部たちの登場シーンもあざとさを感じさせるばかり。なんともゆるいエンディングで唐突にいつものテーマ・ソングが鳴り響くところも失笑もの。
それでもよかった点と言えば、旧三部作と内容的なつながりがほとんどないため、完璧に環を閉じたシリーズの名をおとしめるようなことがなかったことでしょうか。単なる偶発的な珍品として、シリーズのファンは確認しておけばいいのではないでしょうか。
参加しなかったポール・グリーングラスもマット・デイモンも偉かったなぁ、と。
61/2012
#457
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