天地明察
小説『天地明察』で感動的だったところ。それは宇宙という巨大なものに向き合うにはあまりに非力な人間たちが、それでも自らの全力を尽くして事に当たり、果たせぬ想いを次世代に託していく姿だった。
そして残念ながらこの映画では、宇宙というものの大きさや、その探究に費やされた人々の時間の長さなど、空間や時のスケール感があまり描き出されていなかったと思います。
たとえば小説では、主人公の算哲は最初の妻と死別し、その後えんと再婚している。映画では、えんは原作どおり再婚だけれども、算哲はえんとが初婚だ。これはささいな違いのようだけれども、映画の方が確実に算哲の人生のスケール感は減じている。なによりも、算哲がえんにむけて告げた「自分より先に死なないでくれ」というセリフの重みが、映画ではまったく感じられない。愛妻家であった算哲が最初の妻を病気で失ったという、つらい過去とその克服があってこそのあのセリフである。そしてそうした出来事を積み重ねてこそ、人生のスケール感が産まれ、それに対する宇宙のスケール感も増すのではないでしょうか。
あの無意味な襲撃シーンなどを入れる暇があったのならば、そのあたりの演出の積み重ねをもっと考えてほしかったものです。
それでも出演者はみんなとてもよかったと思います。
田舎にいるお母さんは、いつも宮崎美子。
小柄なかわいいおばあちゃんは、いつも八千草薫。
良くできた元気な妻は、いつも宮﨑あおい。そろそろこんな感じの宮﨑あおいも見飽きてきましたが、それでも悪いわけではありません。
岡田准一は原作の算哲のイメージからするとちょっと二枚目すぎるような印象を持っていましたが、映画を観て彼は意外と器用な俳優だなぁと感心しました。
64/2012
#460
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