プロメテウス
なぜ、『プロメテウス』は『エイリアン』を名乗らなかったのか?
製作当初はエイリアンの前日譚であるとされていたにもかかわらず、出来上がってみると『エイリアン・ゼロ』ではなくて、まるでコードネームのようなタイトルが付けられていたのは、どうしてなのだろう。
わからなくはない。
33年前の新進気鋭の映像作家も、今では『巨匠』と称される存在となった。
正直、今さら『エイリアン』でもないだろう。その気持ちはよくわかる。
『2』はともかく、『3』『4』と蛇足のようにシリーズは続けられ、挙げ句の果てには『vsプレデター』シリーズで大迷走。もはや『エイリアン』には手垢がつきまくりだもの。
だから、せいぜいエイリアンの『世界観』をほのめかす程度のSFになれば御の字だと思っていましたよ。
しかし開けてみれば、そこにあるのは『世界観』ではなくて『世界』そのもの。
皆が実は期待していた物語がそこにあった。
その物語は意外でも謎でもなかったかもしれない。予告編を観れば今回のエイリアンがどう『感染』していくのか予想できるし、CMで『人類の起源』などと言われれば、その『謎』など観なくてもわかってしまう。
でも、いいのです。『予想通り』の悪夢が目の前で始まったのですから。
美しくてグロテスク。金属質で粘液質。無機的で有機的。
33年の間に磨きをかけられた映像美を駆使して描かれるものは、33年前と同じ空気。さらに美しくなった恐怖。『エイリアン』を初めて観たときの、なんともいえないイヤな感触。直視したいようなしたくないような、その生命力。
なぜ、『プロメテウス』は『エイリアン』を名乗らなかったのか?
名前なんかどうでもいいからです。名前なんか記号で十分だからです。
観ればわかるのです。33年ぶりに帰ってきた、本物であることが。
エンディングで劇場に響き渡る、あの耳障りな『声』。あれが名乗りなのです。誰が本当の『エイリアン』なのかを皆に知らしめるための。
いいものみせてもらいましたよ、本当に。
『過去の亡霊』に出会ったら、こんな風に怖いのでしょうね。
リドリー・スコット、74歳。ほんとうにありがたいことです。
53/2012
#449
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