戦火の馬
大型トラックから始まって、サメ、宇宙人、恐竜やクマ型ロボットなどなど。
スピルバーグ監督は、人でないモノや動物を、映画の中でいきいきと魅力的に描写するのが得意です。本作でも冒頭から馬とアヒルが素晴らしすぎます。
本作のオリジナルは児童文学らしいですが、そのストーリーがまず、とてもよいものだと思いました。
その一つの面は、一頭の馬の数奇な運命を描いた『馬』サイドのストーリー。
もう一つの面は、その馬と出会った多くの人々の、それぞれのドラマを描いた『人間』サイドのストーリー。
両面が組み合わさりながら、シンプルでわかりやすく、そして感動的な物語が組み上げられています。
スピルバーグは映画の原案を自分で創り上げるのではなく、よい原作を見つけて、それを映像化するタイプの監督です。魅力的な原作、さらには得意な動物ものときたら、本作の完成度は保証されたようなものです。
ゆったりとしたホームドラマと、スリリングな戦争ドラマ。その両者が緩急をつけながら交互に展開して、長い上映時間を感じさせることがありません。疾走する馬の躍動感。過酷な戦場。ファンタジックなまでに美しい風景。どのシーンも無駄がなく、素晴らしい映像です。
またこの映画は、『プライベート・ライアン』同様、セリフで主張することのない『反戦映画』でもあります。
『プライベート・ライアン』は、その凄絶な戦場描写で「絶対あんなところには行きたくない」という思いを観客に抱かせました。
本作では、臆病な馬だけでなく、善良な人間までもが『WAR HORSE』になることを強いられる様を描くことで、戦争の空しさを強く印象づけます。
言葉ではなく、あくまでも映像と、そして映像による物語で語る姿勢は、映画として正しい姿だと感じました。
息を飲むほど美しく、そしてスリリングで躍動感あふれる映像。あらゆる登場人物から伝わってくるあたたかい感動。やさしさ。おもいやり。
恐怖や不安が渦巻くなかを、前だけをしっかり向いて、家に戻るためにひたむきに進む。
それが本当の勇気。
この映画はほんとうに、めったに出会えないほどの、絶品です。
18/100
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