« トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1 | トップページ | ヒューゴの不思議な発明 »

2012/03/03

戦火の馬

Wh大型トラックから始まって、サメ、宇宙人、恐竜やクマ型ロボットなどなど。

スピルバーグ監督は、人でないモノや動物を、映画の中でいきいきと魅力的に描写するのが得意です。本作でも冒頭から馬とアヒルが素晴らしすぎます。

本作のオリジナルは児童文学らしいですが、そのストーリーがまず、とてもよいものだと思いました。
その一つの面は、一頭の馬の数奇な運命を描いた『馬』サイドのストーリー。
もう一つの面は、その馬と出会った多くの人々の、それぞれのドラマを描いた『人間』サイドのストーリー。
両面が組み合わさりながら、シンプルでわかりやすく、そして感動的な物語が組み上げられています。
スピルバーグは映画の原案を自分で創り上げるのではなく、よい原作を見つけて、それを映像化するタイプの監督です。魅力的な原作、さらには得意な動物ものときたら、本作の完成度は保証されたようなものです。
ゆったりとしたホームドラマと、スリリングな戦争ドラマ。その両者が緩急をつけながら交互に展開して、長い上映時間を感じさせることがありません。疾走する馬の躍動感。過酷な戦場。ファンタジックなまでに美しい風景。どのシーンも無駄がなく、素晴らしい映像です。

またこの映画は、『プライベート・ライアン』同様、セリフで主張することのない『反戦映画』でもあります。
『プライベート・ライアン』は、その凄絶な戦場描写で「絶対あんなところには行きたくない」という思いを観客に抱かせました。
本作では、臆病な馬だけでなく、善良な人間までもが『WAR HORSE』になることを強いられる様を描くことで、戦争の空しさを強く印象づけます。
言葉ではなく、あくまでも映像と、そして映像による物語で語る姿勢は、映画として正しい姿だと感じました。

息を飲むほど美しく、そしてスリリングで躍動感あふれる映像。あらゆる登場人物から伝わってくるあたたかい感動。やさしさ。おもいやり。
恐怖や不安が渦巻くなかを、前だけをしっかり向いて、家に戻るためにひたむきに進む。
それが本当の勇気。

この映画はほんとうに、めったに出会えないほどの、絶品です。

18/100

#415

|

« トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1 | トップページ | ヒューゴの不思議な発明 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 戦火の馬:

» 『戦火の馬』 アメリカは壊れているか? [映画のブログ]
 アメリカはずいぶん変わった。  2011年公開の『ワイルド・スピード MEGA MAX』を観て、私はそう感じた。  私の好きなアメリカ映画は、たとえば『大いなる西部』(1958年)や『大脱走』(1963年)である。 ...... [続きを読む]

受信: 2012/03/05 23:40

» 戦火の馬 よく出来すぎていて感動するのをうっかり忘れかけた、ヽ`アセ(;~▼~;)アセ、ヽ` [労組書記長社労士のブログ]
【=14 -0-】 今年はどうしたんやろう、我が家、ちっとも試写会が当たらない・・・アダッ(゚...゚;)Θミ。 予告編の段階ではあまり食指が動かず試写会が当たったら見るのになという感じだったけど、評判がいいのでついつい見に行ってみた「戦火の馬」。   第一次大戦前夜のイギ...... [続きを読む]

受信: 2012/03/15 12:55

» 戦火の馬 [映画 K'z films 2]
Data 原題 WAR HORSE 監督 スティーヴン・スピルバーグ 原作 マイケル・モーパーゴ 出演 ジェレミー・アーヴァイン  エミリー・ワトソン  ピーター・ミュラン 公開 2012年 3月 [続きを読む]

受信: 2012/03/31 20:03

» 映画:戦火の馬 [よしなしごと]
 スティーヴン・スピルバーグ監督作品だし予告編もすばらしい。期待に胸をふくらませますが、それだけでなく試写会で見た人みんなが感動している。ただ期待しすぎると裏切られるのも常。期待しつつ期待を押さえるのが苦労した作品、戦火の馬の記事です。... [続きを読む]

受信: 2012/06/17 12:50

« トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1 | トップページ | ヒューゴの不思議な発明 »