はやぶさ/HAYABUSA
Brave New World
実話ベースの映画、それも最近の実話で登場人物が存命である場合にはなおさら、どうしても本人たちに遠慮してあまり大胆な脚色ができず、ついつい無難な内容の映画になってしまうことが多いようです。
そしてこの映画の場合、竹内結子扮する『水沢恵』という架空の人物を主人公にすえ、彼女に映画としてのストーリー部分を集約させているのが上手いところだと思いました。
解説的説明的お勉強的シーンは非常に多いのですが、その合間にちょっと挙動不審で個性的な部外者水沢をかませることで、単調になることを防げていたと思います。
また『健気に戻ってきたはやぶさ』というような安易な感動ではなく、先の見えない困難なプロジェクトに携わる科学者たちの熱意をちゃんと描いて、感動に結びつけていたのも良かったです。
「結果の見えないものに予算をつけるのは勇気が要る」
無事に打ち上げられるかどうか
無事にイトカワにたどり着けるかどうか
無事にサンプルを採取できるかどうか
無事にサンプルを持ち帰れるかどうか
持ち帰ったサンプルで、太陽系の成り立ちが果たしてわかるのか
…そして、わかったところで何が変わるのか
科学研究の見返りというのは、ほんとうに不確かな物です。
研究がなんとか成功したところで、それにより私たちの生活にどんな影響が生まれるのか。誰にもわかりません。
それでも、たぶんそんな小さくて不確かな一歩一歩によって、長い年月をかけて私たちはここまで進化してきたのでしょう。
目に見えない小さな一歩を積み重ねて、私たちはここまで来たのでしょう。
そして、その一歩を刻むために一人の科学者が一生で果たせる役割というのは、本当にわずかなものでしかないというのが、この映画を観るとよくわかります。
3億キロ離れた小惑星から、小さな砂粒を回収してくるのに25年近くかかるのです。
自分の代で終わるのかどうかわからないその計画に、先の見えない暗闇を相手に骨身を削って従事するその動機は、『好きだから』という以外にはないのですよね。
そして、好きなことを一生懸命やってそれが職業になるというのは、とても幸せなことだとも思いました。
はやぶさの予算を調べてみると(どこからどこまでの予算かわかりませんが)125億円という数字が出てきました。
今話題の、自衛隊次期主力戦闘機の候補F35が一機で50億円くらい。
世界中の科学者に、世界中の政府が勇気を出して予算をつけてあげたなら。
もっと新しい世界が生まれるかもしれません。
88/100
#368
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