日輪の遺産
Far Beyond The Sun
この映画は、唯一生き残った少女、久枝のモノローグを中心として構成されている。モノローグ形式の場合、当然のことながら本人が知っていることでしか物語を構成できないわけですが、本作では久枝が作戦の実行責任者である真柴少佐の日記を手に入れているという設定となっているため、久枝のモノローグだけで作戦を実施した側と巻き込まれた側の両方の物語をほぼ網羅することができています。
作戦のスケールが意外とちっちゃいのは興ざめですが、この久枝のモノローグは、久枝と望月曹長の数奇な人生の物語と考えれば、それなりの盛り上がりも感動もある物語だったと思います。
そしてこの映画ではもうひとつ、日系のアメリカ軍将校のモノローグが久枝のモノローグの『外側』を挟み込むように配置されています。
このモノローグの必要性。それは日本側の登場人物には知り得なかった事実。つまり『そのあと財宝はどうなった?』という点に答えるためのものだと思います。
これはこれで観客の好奇心に答えるものではありますし、小説の場合なら、こうした構成は特に問題にはならないのだと思います。小説は各人が好きなペースで読むことができます。久枝のパートで盛り上がった気持ちを落ち着けた後、その後の物語を読めばいいからです。
でも映画となるとどうでしょう。せっかく久枝のパートできれいな曲線を描いて盛り上がりのピークに達したにもかかわらず、そのあともだらだらと物語が続くようで、あまり効果的ではなかったような気がします。観客の精神的な盛り上がりのピークで、すぱっと終わってしまった方が、印象的だったのではないでしょうか。
そうまでして入れた割りには、意外な事実が明かされるわけでもなく、マッカーサーが財宝を諦めた心情もなんだかわかりづらい。
挙げ句の果てには死者が勢揃いしてのご対面シーンと、取って付けたようなご懐妊宣言。
これだったら、はっきりいって無い方がよかったのではないでしょうか。
なんだか散漫になってしまった構成のせいで、最終的な印象はあまりよくなかった映画ですが、出演者はなかなかよかったのではないでしょうか。
特に、いつもはハイテンションかつワンパターンな演技に終始する中村獅童、ユースケ・サンタマリアの両名が、妙に油っけの抜けたソフトな演技を見せていたのが印象的でした。
78/100
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