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2011/08/08

神様のカルテ/夏川草介

Kami答えはいつもそこにある

「泣ける」という評判、そして映画版の予告編から、とてもウェットで情感あふれるものを想像していたけれども、それは大きく裏切られます。
主人公は変わり者で(一人称の文体も独特だ)ある意味冷徹。基本的には大きく感情を表すこともない。そんな主人公の目を通して、病院という空間の中に日常的に満ちあふれている人生のクライマックスを、人の命の儚さ、脆さ、そして尊さを、さらには医療の直面する問題点までをも描く。早い話が、殺人事件の起きない海堂尊です。

そして海堂尊同様、なかなか出来がよい。
簡単に失われる命。そんな無常の中にひっそりと存在する、極々当たり前だけれども、とっても貴重なもの。毎日それらに向き合って生きている医師だからこそ、そんな見過ごされがちな『宝物』を描くことができるのかもしれない。

この物語の感動は、作者がプロットを練り上げ、伏線を張り巡らせて構築したものではない。誰の身にも起こりえる、というより確実に起こる瞬間の心の動きを、自らの経験をもとに巧みに描写した結果として発生したものだろう。
それでも、この本が与えてくれるものは大切なものなのだと思います。この本を読んで感動するということは、自分にとって大切な何かに、来るべき何時かに、想いをはせるということなのですから。

そして、問題は映画です。
予告編を観る限り、映画版の一止は小説版の一止とは全く異なる性格設定をされているようです。そして本作を読んだ方にはおわかりだと思いますが、主人公である一止の性格こそが、本作のさらっとした感動の源なのです。おいそれと変えてよいものではないでしょう。

『ヤッターマン』を思い出すとなんとも不安な気持ちになってしまう主演の櫻井翔が、思いの外、今回は悪くないように見えてしまうのは、なんのことはない、これは『あて書き』なんですよね。キャスティングがまずあり、キャスティングに従ってキャラクター設定を合わせているのでしょう。
小説の映画化といいながらも、その再現よりはキャスティングが優先しているわけです。
なんだか映画が楽しみになってきますねぇ…

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