もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
Diamonds And Rust
『ビジネス書』と呼ばれるジャンルがある。個人的な印象としては、なんらかの自己啓発的な内容を、新奇なタイトルのインパクトで一気に売ってしまおうというものだ。
この映画の同名原作は、オフィシャルサイトによれば『青春小説』とされているが、この映画を観る限りは、どうにもビジネス書的発想で書かれた書物のようだ。
タイトルから想定されるような(または期待するような)物語はそこにはない。本来『プロセス』重視が当然である『高校野球部』と、当然『結果』重視である『高校野球大会』とを意図的に混同しながら、高校野球と経営論を結びつけて話しは進む。しかしその大部分は単なるこじつけにしか思えず、物語を面白くするようなアイディアがまったく感じられない。
「うまくいっていなかったチームが、コミュニケーションを取るようにしたらうまくいくようになった」
結局はこれだけの話であり、経営論というよりもコミュニケーション論である。というより単なるスポ根だ。
ありきたりな内容をキャッチーなタイトルで売りに出し、肝心な中身はろくなアイディアもないという、もはや文学でもないようなものが原作では面白い映画をつくるのはかなり困難だろう。
そして、それを盛り返すだけの映画的力量も持ち得なかったのが不幸の上塗りだ。
映像的な魅力も特にない。ここで観客のどんな感情を喚起したいのか、その意図が丸わかりで聴いていて恥ずかしくなるような音楽。スポーツ映画なのに、まるでスリルやスピードを感じられない試合シーンの演出。主人公の感情の動きがあまりに唐突なシナリオ。
結局、全体的な地盤沈下により、相対的に俳優たちの演技が一番よかったような気がしてくるから不思議なもの。その俳優も、経費削減のためか、妙に大人が出てこないのが印象的。
こんなことになるのなら、いっそのこと普通の映画とは別に『ビジネス映画』というジャンルを設けたらどうだろう。
50/100
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