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2010/12/12

武士の家計簿

Bk …それは、そろばん侍だから?

この映画の見所。それはそろばん侍が行う『家庭内仕分け』なのだろう。
しかし借金の返済に奇策があるわけではない。家中の金目のものを売り払い、低金利に借り換え、そして質素倹約である。
もちろんこのプロセスを豪華俳優陣のコミカルな演技で引っ張るわけなので、観てそれなりにおもしろくもあるけれど、ただそれだけ。結局は俳優に頼るのみで、そのストーリーに意外性や驚きがあるわけではない。『実在の家計簿から再構成された物語』というわりには、武士の経済面をかいま見る面白さもほとんど感じられなかった。

そしてこの映画のもう一つの柱は、父であるそろばん侍と息子との確執であろう。実は借金騒動よりもこちらの方が多くの時間を費やしているかもしれない。
父の『そろばん』への拘りもわかる。息子のそれに対する反発もわかる。そして家族の確執というのは、実際は明確な解消がないまま時が過ぎ去ってしまうものかもしれない。
しかしこれは映画です。確執を描くのならば、最後には明確に両者が歩み寄る、分かり合えるようなエピソードが無いと、どうにも収まりが悪いのです。

実話であるゆえに、架空のエピソードを入れにくいのも分かります。でも普通の家は、たとえそろばん侍の家であっても、そうそうドラマチックな事件など起こらないものです。だからこの映画の後半は、単なる冠婚葬祭の羅列に過ぎません。もちろん冠婚葬祭は十分にドラマチックなものでもあります。それは『おくりびと』を観たってわかります。ただそれは丹念な肉付け・演出があっての話。
総じて物語を構成するエピソードが平凡で意外性・盛り上がりに欠け、かつ、全体としてそのつながりもよくないのがこの映画です。

後半には何故か幕末の動乱までも盛り込まれていますが、本体の家庭の物語が締まらないところに、さらに他の要素を詰め込むのは単なる逆効果。昨今の幕末ブームに便乗+映画に協力してくれた金沢の皆さんへのサービスといったところでしょうが、味気ない料理に変わった調味料入れても、おいしくなるわけがありません。

経済ドキュメンタリー的な面白さもなく、ドラマとしての盛り上がりもない。役者の演技以外に楽しみどころがほとんどないこの映画ですが、その役者も時の経過と共に一人亡くなり二人亡くなり。ラストに向けて映画がどんどん閑散としていきます。
最後にいきなり実際の家計簿の映像が映し出され、まるで年表のように関係者のその後が字幕で紹介されるエンディング。いくら『実話』を強調したところで、『実話』が感動や面白さにつながるわけではありません。収まりの悪い映画を無理にまとめるその姿。それこそが、そろばん侍があんなに嫌った『帳尻合わせ』ではありませんか。

家族が一致団結して借金を乗り越える姿と、借金まみれの現代の日本を重ね合わせ、それをベテランキャストで面白おかしく描く。
たったそれだけのアイディアで映画を企画するとは…さすが、質素であります。

#267

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投稿: 日本インターネット映画大賞 | 2010/12/24 10:51

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