大奥
『目の保養』
(『大奥/よしながふみ』より続く)
映画化されるのは、なんとコミック第1巻のみ(最後は省略)。今までのコミックの映画化では5巻、10巻分あたりまえ。最初はあまりに少ないように感じた。それも本編というよりはプロローグ。『吉宗顔見せ編』であって、厳密には本編は始まっていないともいえる。
しかしこれは成功だったのかもしれない。映画化に際して通常行われる『端折り』が一切なく(端折らなくても2時間でおさまってしまうから)、原作のよさがそのまま出ている。原作で感動したシーンで同じように感動できる。原作を『超える』部分はないかもしれないけれど、目減りしている部分もすくなく、失点の少ない手堅い映画化になったと思う。また1巻のこのエピソードは、今のところ『大奥』唯一の「悲劇でない」エピソードであるのも、映画化にはふさわしかったかもしれない。
予告編やポスターをみると柴咲コウが主演のように思えるが、原作同様に男目線であるため、実質的な主演は二宮和也である。実際柴咲の登場するシーンはそれほど多くなく、二宮との共演シーンはさらに少ない。柴咲にとっては労少なく露出は多い『おいしい役柄』だったといえる。
二宮扮する水野は、かなりの剣の使い手という設定。それを考えると二宮は決してベストなキャスティングではないだろう。顔も童顔だし身長も低く、どう見てもそれらしくは見えない。それでも彼は表情や台詞回しで、それっぽい雰囲気をかもしだしていた。なるほどイーストウッドがキャスティングした理由がなんとなくわかったかもしれない。
柴咲も好演。というよりも原作の吉宗のかっこよさを原作通りの台詞回しで忠実に再現。個人的にはいつもがちゃがちゃしている柴咲は今ひとつ苦手なのですが、今回の柴咲は今まで観た中で一番よかったです。
あと書いておきたいのは阿部サダヲのことです。どう考えても大奥にサダヲの居場所はないだろうと思っていましたが、意外や意外、真面目な演技もはまっています。いつものサダヲが観られない残念さ半分、無難に努めてホッとしたさ半分といったところでしょうか。でも、あれだったらサダヲでなくてもよい気もしますが…
それにしても女性客の多い映画です。下は中学生から上は初老のご婦人まで。単身客からグループ客、親子客。いくら人気の少女マンガ原作とはいえ、少女マンガというのはこんなに普及しているものなのでしょうか。
終映後、前列の女性がひとこと。
「いや~、目の保養、目の保養」
…なるほどです。
#257
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コメント
初めて書き込みします ジューダスプリーストを調べていて 偶然にも こちらを知り 過去の内容も読ませてもらいました。 とても共感できる内容も多く 特に映画は 見て見ようと思う参考になって 重宝してます。
これからも拝見させていただきます。
投稿: びっけ | 2010/10/06 11:38
びっけさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
更新は不定期で、内容も単なる感想に過ぎず、
映画をご覧になる際の参考にはあまりならないかと思いますが、
お読みになってくださる方がいらっしゃるというのは、とてもうれしいことです。
今後もよろしくお願いします。
投稿: starless | 2010/10/06 20:06