大奥①~⑥/よしながふみ
ここは、あまりに暗い
「一人の女将軍に、仕える男たち三千人」
そんな内容の少女マンガだけれども、浮ついた内容は微塵もない。
恋愛はあっても喜びはない。そこにあるのは、将軍家の長い系譜に沿って描かれる、延々と繋がっていく悲しい物語だ。
あっけないほど簡単に時は移り、何人もの主人公たちが入れ替わっていくけれども、マンネリ化せずに、それぞれの時代が異なった趣の物語となっているのは見事。また、少女マンガでありながら、常に男目線で物語が進んでいくのも独特である。
そこに描かれる人々は、少女マンガというよりも実に時代劇的だ。個人よりも組織を。幸福よりも名誉を。欲望よりも体面を優先する、今はいなくなってしまった昔の日本人たち。そんな彼らが耐えに耐えて、最後にひび割れて、なかから流れ出る熱い想い。それがこのマンガの見所であり、感動の源なのだと思う。
冒頭に現れたきり姿をみせない、しかし間もなく再登場するであろう吉宗。
何代にも渡って繰り広げられてきた悲劇を、彼女は断ち切ることができるのか。
それとも彼女もまた、悲しみの歴史の中に沈んでしまうのか。
…とその前に、『大奥』が映画になった。
(『大奥』に続く)
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