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2010/09/11

悪人

Aku 誰が本当の『悪人』なのか?

…とはいっても、みなさんご存じのようにこの映画は『犯人捜し』の映画ではありません。
犯人は予告編で明かされている、そのまんまです。
では、このキャッチコピーは何を意味しているのでしょう?それはこの映画の『テーマ』を表しているのです。

映画には『テーマ』があることがあります。それは製作者側の主張であったり、問題提起であったり。映画の根底に横たわる、なにかそういったものが『テーマ』です。

『どんな人の心の中にも善と悪、美と醜がある。ゆえに人を善と悪、二つに区分することは簡単なことではない』

この映画の『テーマ』はこんなところでしょうか。
映画にはよく取り上げられる『テーマ』で、ありふれたものと言ってもいいでしょう。

そして映画の要素にはもう一つ、『ドラマ性』があります。
起承転結、物語の筋書きで観客の興味を引きつける。それが『ドラマ性』の役割。映画を『面白い』と観客に思わせるのは、この『ドラマ性』の役目です。

『テーマ』と『ドラマ性』。
映画の中には、この二つが含まれているのが一般的です。ただその配分はまちまちで、場合によってはどちらかしかないこともあるでしょう。

『衝動的に殺して、衝動的に逃げて、すぐに捕まる』

この映画のストーリーは、一言でいってしまえばこれだけです。つまり『ドラマ性』は極端に少ないのです。意外な展開、驚愕の真犯人。そんなものは一切ありません。
ではなぜ、そんな単純な物語に2時間半近い上映時間が必要だったのでしょう。
それはもう一つの要素、『テーマ』を語るためにたくさんの時間を使っているからです。

一人一人の登場人物を順番に、丹念に丹念に描写して、それぞれの内面の善と悪を描く。ちょっと描いては次の人物に。またちょっと描いたら次の人物に。映画の大半はこの作業に費やされています。すかすかのストーリーの上に、膨大に描写された登場人物内面の善と悪。
ドラマ性 : テーマ = 1 : 9
それがこの映画です。

『テーマ』に真新しい魅力があるわけではない。興味を引く『ドラマ性』もない。
『つまらない映画』としての条件が揃ってしまっている本作ですが、本作を土俵際で踏みとどまらせているのが、映画としての完成度の高さです。
映像自体の描写力が高く、心理描写もセリフだけに頼ってはいませんし、さらに映像そのものが美麗です。
はっきりいってしまえば、もし本作が
ドラマ性 : テーマ = 6 : 4
くらいの配分だったら、間違いなく傑作だったことでしょう。

でもそれは映画のせいではありません。当然、原作自体がそのような配分だったのでしょう。
そうなのです。テーマとドラマ、批判と娯楽。その二つのせめぎ合いは、あらゆる芸術・エンターテインメントのなかに存在しているのです。

#256

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