トイ・ストーリー3
いつまでも、いっしょにいられれば、いいのに…
『おもちゃが動き出して、大騒ぎするアニメ』
このシリーズの第一印象は、だいたいこんなものでしょう。こどもは喜びそうだけれど、大人はちょっと敬遠してしまう雰囲気。キャラもアメリカンでかわいいとは言い難い。だから観たことがなかった。
ある日、映画館で『3』の予告編を観た。意外だった。こんな恐ろしい話だったのだろうか。『1』と『2』をDVDで観てみる。やっぱりそうだ。
このシリーズのテーマは、多くの人が目を背けながら生きている人生の真実。
「人の存在には絶対的な価値はない」
みんな思っていますよね。
「職場は自分がいないと回らない」「みんなに評価され、同期の中では出世も早いほうだ」
自分の存在に「なんらかの意味がある」と信じていますよね。
でもどうでしょう。今日あなたが交通事故で亡くなっても、職場や学校や社会は、若干の混乱はあったとしてもすぐにもとに戻ります。あなたの代わりにあなたの役目をはたす人も、すぐに現れます。
事故にあわなくたって。歳をとれば、まだまだやれるとしたって、自動的にシステムから外されることになります。
そう思ってしまうのはつらいことです。映画の中でおもちゃたちが、いずれ飽きられ、捨てられ、忘れられてしまう存在であることを知ったときのように。
でもそれが真実。
でもだからといって人の存在に価値がないわけじゃない。
絶対的な価値はなくても、相対的な価値がある。
あなたの存在を大切に思ってくれる家族がいる。あなたが大切に思う仲間がいる。それらの関係のなかにあるあなたの価値。その関係性のなかでしか意味はないけれど、それは人が生きる原動力になる。それがこの映画の主張。
映画館の中には、若者達がいっぱい。自分が主役で、自分を中心に地球は回っていると信じている世代。
だからいつか何十年か経って、大切な人や職業や何か自分の大切なものを無くしたとき。自分の走っているレールに不意に終着点が見えてしまったとき。前に進む意義が見いだせなくなってしまったとき。もう一度この映画を観て、いまとは違ったものを感じ取って欲しいな。
だからこの映画を、本当はもっと年配の人々にもたくさん観てほしい。
でもこの映画の第一印象は、『おもちゃが動き出して、大騒ぎするアニメ』。
中身のテーマと見た目のイメージの大きな落差。
それがピクサー作品の魅力でもあり、足かせでもある。
#255
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント