四季 冬/森 博嗣
Starless and Bible Black
『理系ミステリー』などと呼ばれ、あたかも特異な文学であるようにカテゴライズされている。確かにそうかもしれない。情緒ではなく理論で。感情ではなく理性で。二つに分けて、さらに二つに分けて。分解して分類して、観察して分析して。その手法は確かに『文系』とは対極にあるものかもしれない。
しかし作者の小説をいくつか読むと、自ずと気がついてしまう。人間の心を極小単位まで分解し、分けて分けて分け入って。どうしても分け入れないその場所に。到達点のような行き止まりのような。白いような黒いようなその場所に。
壮大なスピンオフ、過剰なまでのファンサービスである『四季シリーズ』。本作を読むととてもよくわかる。あらゆる作者の小説は、本作と直接つながっているものであっても、いないものであっても、それこそが主題なんだって。そして気がつく。『理系』だ『文系』だと区分することの愚かさを。結局同じなんだもの。どんな方向から、どんなアプローチをしても。人間の思索の行き着くところは、結局一つなんだから。
100年の時を超える女王が、その探求の果てにたどり着いた場所。それは地球を埋め尽くす他の凡人たちが、思索することもなく、ただ漫然と行き着いている場所と変わりがない。それは理性の否定なのだろうか。結局行き着いてしまう人間には、思索は無意味な行為なのだろうか。
きっとそうではない。
なぜなら、あがく女王を見つめる作者の目は、とてもやさしいから。
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