マイレージ、マイライフ
どこにでもあって、どこにもないもの…
俗に『ロードムービー』と呼ばれる種類の映画があります。それは何らかの『旅』を描いた映画です。出発地点から到着地点へ。その旅の流れに沿って登場人物の成長や人間関係の変化が描かれ、旅の終了とドラマの到達点、帰着点をリンクさせるような構成になっているのが一般的です。
この映画も広い意味での『旅』が描かれた映画です。でもこの映画の『旅』には、スタートもゴールもありません。同じ場所に何度も出向くこともあれば、ぐるっと回って同じところにもどってきたりもします。そしてそんなこの映画の『旅』と同じように、この映画の物語もぐるぐると同じような場所を回り続けます。
だから映画が終わっても、物語は終わりません。終わらないどころか、始まったときと何も変わっていないようにも思えます。でもそんな物語に欲求不満を感じるかというと、そんなこともありません。なぜなら、そんな『目的のない旅』自体が私たちの人生そのものだからなのです。
安定しているのか、よどんでいるのか。進んでいるのか、流されているのか。何がリアルで、何がフェイクか。動くことに意味があるのか、とどまることに価値があるのか。自分の居場所ってどこなのか。どこにもないのか、あらゆる場所がそうなのか。
そんなあいまいではっきりしない、結局何も解決しないその世界。でもそれは、同じ監督の『JUNO/ジュノ』と同じように、辛い世界ではあっても、なぜか居心地がいいのです。「ずっと終わらなければいいのに」。そしてそんなこの映画の居心地のよさに、助演女優賞にノミネートされた二人が大きく貢献しているのは、たぶん間違いありません。
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