シャッター アイランド
いっそインドのあの人に、頼めばよかったのに
「私は普段プロットに重きを置いた映画を作らない」
アカデミー監督賞を受賞した『ディパーテッド』公開時のマーティン・スコセッシ監督のお言葉であります。
『ディパーテッド』もそうだったけれど、本作を見てもなるほど納得。「作らない」のではなく「作れない」なのでしょう。
この手の『どんでん返し映画』については、その昔『フォーガットン』のところでくどくどと書いてしまったので詳しくはそちらを見ていただくとして、簡単に言えば、『どんでん返し映画』には『どんでん』をなるべく最後まで隠しておかなくてはならないタイプと、そんなに真剣に隠しておかなくてもよいタイプの二つがあるのです。そして本作を分類すれば、隠しておかなければならないタイプだといえるでしょう。
それを考えると、本作の宣伝や予告編の作りは、とてもよろしくないといえます。「謎を解いてみろ」という挑戦スタイルは観客の興味をたしかに引きますが、あまりに『驚愕のラスト』を強調しすぎています。『どんでん返し映画』であると悟られた段階で、このタイプの映画は劣勢にたたされてしまうのです。たぶん多くの観客が予告編を見た段階で、細部はともかくとして大まかな仕掛けを見破ってしまったはずです。
もちろんラストのネタばらしだけがこのタイプの映画の価値ではありません。途中でネタがわかったからといって、映画がつまらなくなるわけではありません。二度三度と見ても楽しめる作品もたくさんあります。たとえ予告編で察しがついたとしても、ラストのひっくり返しの鮮やかさがあれば、映画としては十分楽しいものとなるはずです。前半から中盤にかけて注意深く伏線を張り巡らし、最後に一気にひっくり返す。この最後のカタルシスがこのタイプの最大の魅力なのです。
残念ながら本作にはこの『鮮やかさ』がありません。最後のカタルシスが本作には欠けています。伏線があまりにもったいつけすぎで、伏線というよりも、まるで少しずつひっくり返しているかのような印象を受けます。序盤で30%までひっくり返し、中盤で50%、後半で80%、ラストでやっと100%。キレがないのです。鈍いのです。よく言えば『親切』なのですが、悪くいえば『だるい』のです。
そして映画全体としてはイマイチなのに各パートごとの出来が素晴らしいのも『ディパーテッド』と一緒です。陰鬱な島の情景、影のある登場人物、荘厳な音楽。どれも素晴らしい出来映え。
だからこれは、スコセッシ監督のせいではないのでしょう。監督として選んだ方が悪いのです。
#250
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