ソラニン
Gimme shelter
そう、そんな時、たしかにあったよね。
得体の知れない巨大なものに、どろっとした真っ黒なものに、自分のこれからが塗り込められて、息が出来なくなってしまうように思ったこと。
それは、いわゆる『社会人』とか『大人』とか、そういった存在になるために必ず通らなければならない道で、苦しいけれども通り過ぎてしまえば、退屈だけれども平穏で、束縛はあるけれど安定した、未来がきっと開けていく。そんなふうに思って、そんなふうに信じていたよね。
でもね、今になってみれば、そうじゃなかったことも、よくわかる。
常に望まぬ変化にさらされ、自らがよって立つ基盤もあやふやで。
自分たちの大切なものを犠牲にして手に入れたはずの『人生』も、あの時の苦しみの何倍もの苦しみで、満ちあふれている。
彼女たちの苦しみは、産みの苦しみ。暖かく守られた今までの世界から、苦しみに満ちた本当の世界に踏み出すための、最初の一歩の、最初の苦難。涙を流して乗り越えた彼女たちには残酷だけれど、これからもたくさんの涙と、たくさんの苦難と、たくさんの死が待っている。
でも今だけは、少しだけ安心して。
この先なにが待ち受けているにしても、『今』の価値だけは失われないのだから。
そして遠い未来に、自分たちの最初の苦悩を、きっと懐かしく想い出すはず。
#249
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