ラブリーボーン
死者と生者をわかつもの
楽しかった想い出や、幸せな記憶。
そんなあたたかなぬくもりの中には、二度と戻ることは出来ない。
それは死者も生者も同じこと。
では死者と生者をわかつものは何だろう。
それはどんな悲しみや苦しみが待っているにしても、生者は変化の中に進んでいけるが、死者はどこにも進んでいけないこと。
この映画のスージーの有り様は、『成仏』という概念をもつ日本人にはよく理解できるだろう。しかしその理由、スージーが成仏できない理由は決して『怨み』ではない。スージーにとって『復讐』はなんの意味も持っていない。そのあたりが多くの人々の予想とは違っていることだろう。
だから『犯人捜し』のサスペンスはあるものの、復讐譚としてのカタルシスは観客には与えられない。そのあたりが事前の予想を裏切り、ぴんとこない映画だと評価される可能性も高い。ストーリー自体も、言葉にしたらありきたりで、シンプルで意外性はない。
ではこれは、どんな映画なのだろう。
この映画の音響と映像のレベルは高い。みがきこまれ、とぎすまされている。
そしてそれらを駆使して。成仏できない死者と、進めなくなって『死者』と化した生者のありさま。彼らの苦悩と、そして旅立ちと、別れと。それらを観客に『体感』させるのがこの映画なのではないかな。
エンドタイトルにはブライアン・イーノの名前。
なるほどやっぱり。それでいいんだ。
暗闇で、やさしく観客を包み込む、無機的で、あたたかい電子音。パルス。
#243
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» [映画『ラブリーボーン』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭]
☆凄い作品だと思った。
私的には、P・ジャクソンくらいになると、この悲惨なテーマでファンタジーを創れるのだなと感心した。
と言うのも、私も20年ほど前、宮崎勤事件が日本中を震撼させたとき、
私は、せめてせめて、被害にあった子たちが、死後の世界で幸せになっていて欲しいと思い、このような物語を想った。
しかし、どう考えても、それは厳しい展開にならざるを得ないと、私は端っから諦めるのだった。
展開上、「事件」を経なければならなかったからだ。
そして、今回、P・ジャクソンは、リアルに... [続きを読む]
受信: 2010/01/31 03:20
» 「ラブリーボーン」え~と、何と申しますか…。 [シネマ親父の“日々是妄言”]
[ラブリーボーン] ブログ村キーワード
世界的大ベストセラーの映画化。しかもスピルバーグが製作総指揮、そんでもって監督はあのピーター・ジャクソン!「ラブリーボーン」(パラマウント ピクチャーズ ジャパン)。これで期待するなって方がムリでしょ?おまけに宣伝であれだけ『泣ける!』って煽られたらね~。
スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)は14歳。父・ジャック(マーク・ウォールバーグ)、母・アビゲイル(レイチェル・ワイズ)、妹、弟の4人家族で仲良く幸せに暮らしていた。或る日... [続きを読む]
受信: 2010/01/31 03:48
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[ラブリーボーン] ブログ村キーワードラブリーボーン(原題:THE LOVELY BONES)キャッチコピー:これは、私が天国に行ってからのお話製作国:アメリカ/イギリス/ニュージーランド製作年:200...... [続きを読む]
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» ラブリーボーン [ゴリラも寄り道]
<ストーリー>スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)という魚の名前のような彼女は、14 歳のときにトウモロコシ畑である者に襲われ、... [続きを読む]
受信: 2010/02/03 01:17
» 【映画】ラブリーボーン [新!やさぐれ日記]
▼動機
シアーシャ・ローナン
▼感想
見方は色々あるがどれをとっても破綻
▼満足度
★★★★☆☆☆ そこそこ
▼あらすじ
スージー・サーモン(シアーシャ・ローナン)という魚の名前のような彼女は、14歳のときにトウモロコシ畑である者に襲われ、殺されてしまう。そしてスージーは天国にたどり着くが、父(マーク・ウォールバーグ)は犯人探しに明け暮れ、母(レイチェル・ワイズ)は愛娘を守れなかった罪悪感に苦しむ。
▼コメント
多分、かなり辻褄の合ってない映画だと思う。
色々な見方ができる映... [続きを読む]
受信: 2010/02/11 23:54
» 「ラブリーボーン」喪失と可能性を秘めたファンタジー [soramove]
「ラブリーボーン」★★★★
マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ、スーザン・サランドン、シアーシャ・ローナン主演
ピーター・ジャクソン 監督、135分、 2010年1月29日公開、2009,アメリカ,パラマウント
(原題:THE LOVELY BONES)
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「スージーは14歳で近所に住む男に殺害された、
この世とあの世の中間の天上から
まだ終... [続きを読む]
受信: 2010/02/12 07:59
» ラブリーボーン [映画、言いたい放題!]
話題になってますね。
主演のシアーシャ・ローナンは、
「つぐない
」がとても良かったので楽しみです。(^^)
家族に愛され、恋に胸をときめかす14歳のスージー・サーモンは、
近所に住む男に殺されてしまう。
父は犯人捜しに明け暮れ、
母は愛娘を失った苦みに耐えき... [続きを読む]
受信: 2010/02/15 15:47
» 映画:ラブリーボーン [よしなしごと]
話題の感動作と前評判も好評だったラブリーボーンをようやく観てきました。 [続きを読む]
受信: 2010/02/27 18:09
» ラブリーボーン [小部屋日記]
The Lovely Bones(2009/アメリカ=イギリス=ニュージーランド)【Blu-ray】
監督:ピーター・ジャクソン
出演:マーク・ウォールバーグ/レイチェル・ワイズ/スーザン・サランドン/スタンリー・トゥッチ/マイケル・インペリオリ/シアーシャ・ローナン
私は、スージー・サーモン
あの日、私は14歳で殺された―
これは、私が天国に行ってからのお話。
アリス・シーボルトのベストセラー小説「ラブリー・ボーン」を、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督が映画化したファン... [続きを読む]
受信: 2010/07/07 23:29
» ラブリーボーン (The Lovely Bones) [Subterranean サブタレイニアン]
監督 ピーター・ジャクソン 主演 マーク・ウォールバーグ 2009年 アメリカ/イギリス/ニュージーランド映画 135分 ドラマ 採点★★★★ こんな所で自分の政治的思想を書くのもアレな気もしますが、個人的には死刑制度に反対していない私。もちろん、“犯罪抑止力…... [続きを読む]
受信: 2010/09/12 22:52
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