笑う警官
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私は推理小説が大好きなのですが、その原点といえば、子どものころに読んだ横溝正史の『金田一耕助シリーズ』なのです。そしてその出会いのきっかけは、映画『犬神家の一族』から始まった、角川春樹が仕掛けた小説と映画のメディアミックスによる、横溝正史ブームにあることは間違いありません。角川春樹なくして、横溝正史には出会わなかった可能性が大きいのです。
そんな恩人角川春樹の、12年ぶりの監督作となった本作。当時の角川映画は、映画の出来はともかく、原作はおもしろい小説であることが多かった。そこで本作もまず小説を読んでみました。傑作とまではいいませんが、そこそこおもしろい小説です。が、気になったのはその内容があまり映画向きではないように感じられたことです。
タイムリミット・サスペンス。題材としては映画向きだし、伏線やどんでん返しも用意されている。しかし、とにかく物語に動きが乏しいのです。そしてそれは、映画になっても変わりません。携帯電話で、そしてみんなで車座になって。とにかく登場人物はよくしゃべります。あるシーンでたくさんしゃべって、シーンが変わってもまたしゃべって。
小説ならまだしも、それを『絵』として見せられるとどうでしょう。演劇のようでもあり、小説の朗読会のようでもあり。全編に流れるジャズの気だるいムードとも相まって、人の命がかかったサスペンスらしさは小説以上に感じられません。
原作にない最後のどんでん返しも、面白さよりも混乱につながってしまいそう。原作選びにも、それを脚色し映画化する過程にも、ちょっと問題があったのではないでしょうか。ひとことでいってしまえば、『映画としての面白味に欠ける』というのが本作の印象です。
製作者としての角川春樹は、とにかくお金をかけて、気合いの入った映画づくりをしていたけれど。製作者と監督は、結局まったく違う仕事で、まったく違う才能が必要とされるのでしょうね。
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