アンヴィル!夢を諦めきれない男たち
Metal On Metal
冒頭の讃辞の嵐は、かなり大げさでやりすぎで。『感動と友情の物語』というキャッチフレーズも気恥ずかしい。これは、そんな格好いいもんじゃない。
この映画が映し出しているのは、負け惜しみと、いいわけと、開きなおりと。自分が一番わかっている。そうなれなかった理由も、そうなってしまった原因も。信念だって揺らいでる。波に飲み込まれてしまうことだってある。家族を苦しめていることだって、十分すぎるほどわかってる。
それでも演じて、なりきるのが彼らの生き方だ。前へ進む姿を、ファンに見せるのが彼らのつとめだ。たとえ眠れない夜を過ごしていたとしても。だってそれが『ロック』だから。『ロック』は『虚飾』で、『ロック』は『強がり』だから。
そしてね、みんなはそれでいいと思っている。みっともない負け惜しみといいわけを、愛している。だって彼らは代表だから。立ち止まったり、振り落とされたり、別の安逸な世界を選んだり。幾千万の星屑たちにとっては、どんなに輝きがわずかであっても、彼らは自ら輝く星なのだから。人生の大切なものを犠牲にして、その道を選んだ英雄なのだから。
そして監督も。スピルバーグと組んで仕事をしたこともある脚本家。なのに彼は忘れていなかった。ローディーとしてアンヴィルと過ごしたあの日々を。彼の血の中には、今でもちゃんと流れているんだね。世界中の仲間たちと同じ血が。
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