HACHI 約束の犬
山梨県出身、アメリカ育ち
リチャード・ギアも、いつの間にかもう60歳。お父さんというよりもおじいちゃんといった方が近い年齢となった。そんなやさしいおじいちゃんが、ひたすらかわいい子犬と無心にたわむれるシーンが延々続くこの映画の導入部は、ギアか犬、どちらかが好きではないと正直眠くなるかもしれない。それでも辛抱してしばらく観ていると、やがて単なる動物映画ではない、人間のドラマがちゃんと始まってくる。
この映画の主役は、ハチではなくパーカーとその家族である。主人を待ち続けるハチの心情ではなく、あくまでもパーカー家の日々がドラマの中心となっている。もちろんパーカー家はごくごく普通の家庭であり、とりたててドラマティックな出来事が起こるわけではない。誰にでも起こるような、ささやかだけれども素晴らしい幸せと、誰にでも起こるような、ありふれているけれどつらい出来事。そんな普通の家族の喜びと悲しみを、淡々と、この映画は描いていく。
そしてこの映画におけるハチの役割。それは淡々と流れる日々の中にハチという『流れないもの』を置くことで、その流れを強調することにある。いつもそこで待っているハチ。それを見ることで、いつの間にか流れてしまった日々を、失われたものと得たものを、われわれは強く実感するのだ。
そんな時の流れがもたらす残酷さと素晴らしさを、この映画はちゃんと伝えている。
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