ハリー・ポッターと謎のプリンス(IMAX 3D)
12分間の未来
IMAXデジタルシアター。
巨大なスクリーンと豪華な音響システム、そこに専用にチューニングされた2D・3Dの映画をデジタルプロジェクターで上映する。
そんな映画館で、ハリー・ポッターの新作の3D版を観てみました。
もっとも3Dなのは冒頭の12分間のみ。残りは2Dでの上映ですが、これは3D専用として制作されていないだけに仕方のないところでしょう。3D映画でお馴染みの『赤緑メガネ』を渡されて席に着くと、ディズニー映画「クリスマス・キャロル」の3D予告編(これが結構スゴイ。映画館に雪が降ります)に引き続き、飛び出すワーナーのロゴから本編が始まります。
3D映画というといわゆる『飛び出す映画』という印象が強いのですが、実際今回の作品で印象深かったのは『奥行き感』です。もちろん飛び出す演出もあるのですが、画面の中の構図が奥行きを持って感じられること。そこに建物の角がある、柵の向こう側に人が立っている、そんな当たり前のものが、あたりまえに奥行きをもって感じられるのはとても新鮮。どんなに映像がきれいになってもスクリーンは平面なんだ、という既存映画の限界をまざまざと感じさせるものでした。そこにいる登場人物にさわれるような感じがする。その臨場感は今後の可能性を感じさせてくれました。
と、3Dを堪能する間もなく『メガネをはずして』マークが点滅。12分間の3Dセクション終了です。ここからはIMAX 2Dによる上映にそのまま切り替わります。
2Dについては、普通より大きな画面ときれいな音、というあくまでも既存映画のグレードアップ版。延長線上にあるものであって、飛躍的なものではありません。しかし大きな画面はただ大きいだけではなく、大写しに耐えるだけの画質を兼ね備えています。粗くなることなく、きれいなまま大写しになる。地上波と地デジ、DVDとブルーレイ。既存映画とIMAX 2Dはそんな関係にあるといえるかも知れません。大画面の割には目が疲れないのもその高画質ゆえなのでしょう。
料金は高いですが、未来の映画館をちょっとかいま見ることができました。
で最後に映画の方ですが、一言でいえば『相変わらずの優等生』。
このシリーズは毎回かなり大胆に的を絞った脚色をしてくるのですが、今回は久しぶりの『学園もの』。ロンとハーマイオニーの恋愛を中心に子ども達の学校生活を描きつつ、光と闇それぞれに『選ばれし者』の孤独と苦悩をうまく対比させてストーリーを盛り上げていたと思います。
もちろん切り捨ててしまった部分の弊害もあります。たとえば闇の勢力の台頭による世の中の不安感などがほとんど感じられなかったことなどは、シリーズの流れを考えれば大きなマイナスでしょう。
たぶん4作目くらいからでしょう。本シリーズの制作者は、シリーズとして物語を繋いでいくことよりも、一本一本を単独の映画としてまとめるという方針をとっているのではないでしょうか。原作を再現することによる詰め込み感を排除して、単独の流れのある映画として提示する。
このやり方は、個人的には間違いではないと思うんですよ。だってシリーズの1作目は8年前。8年前に観た映画の伏線を、覚えていることなんかできませんよ。あまりに間が開いてしまったシリーズにとって、伏線をはったり回収したりしても観客がついてこれないのです。多くの観客にとっては、本作でリーマスが出てきたって『これ誰だっけ』ですよ。
だから一作一作を、削ぐところは大胆に削いで、残りを真面目に丁寧に。このやり方はとても勇気があって、とても観客想いで、すばらしいやり方だと思います。原作小説の情報量は、映画というフォーマットに載せられる限界を、遙かに超えているのですから。
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