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2009/06/04

ターミネーター3

T36年間待機していた『序章』

『2』から10数年も経って、突然現れた『3』。そもそも創られる必然性がわからなかった。殺すためのターミネーターと守るためのターミネーター。話のベースは『2』と全く同じ。違っているのはおっさんになってしまったジョン・コナーと、初登場の女性型ターミネーターのみ。『焼き直し』という言葉がピッタリときすぎてしまう。セルフ・パロディ的なセリフやシーンも多いため、観ていて常に既視感がつきまとう。『2』が素晴らしい続編だったのとは反対に、『3』はまるで悪い続編の見本のような映画だ、と当時は思った。

しかし今改めて観てみると、何かが引っかかる。それはラストだ。全編を支配するどことなくコメディーチックなゆるい雰囲気とは不釣り合いな、完璧なバッドエンディング。荘厳で美しい破滅の光景。なぜ、焼き直しの安直な続編に、こんな違和感漂うエンディングがついているのか?

そうなんです。この時点をもって、ジョンの意識が完全に変わったのですよ。ここまでのシリーズにおいては、未来を変えて『審判の日』を防ぐことこそが最大の行動目標だった。しかしだまされて守られて、彼は悟るのです。「自分の運命は変えることではなく、戦うことだ」

ここ半年くらい、さんざん映画館で『4』の予告編を見た後ならわかりますよね。『4』で描かれている陰鬱で殺伐とした戦場。ジョンがその戦場に身を投じる決意をついに固めたのが、ここ『3』のラストなのです。

そう、『3』は『2』の続きじゃない。理想に燃える少年時代のジョンから、過酷な現実を受け入れた大人のジョンへの通過点。『2』と『4』を繋ぐリング。その一瞬は、短いけれどもシリーズにおいてとても重要な数分間。

駄作と評されて6年間。『4』公開直前の今だからこそ、いや、公開直前の今だけ『序章』としての価値を持つ。過去も未来も駄作かも知れないけれど、今だけは観ておく価値があるかもしれない。そんな不思議な作品です。

#218

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