スラムドッグ$ミリオネア
some dance to remember
some dance to forget
たまたま人生の重大局面で目にした出来事が、たまたまクイズの正解だった。そんなある意味、超ご都合主義な物語。クイズの正解が物語の重要な鍵となっているわけでもない。一見主役に見えるクイズ番組は、実は主人公の過去の物語の、単なる語り部にすぎないのだ。
しかし。その『過去』を主軸としながら『現在』と『番組』と。この三つの流れを頻繁に切り替え、組み合わせ、観客の関心を引きつけていくその構成力は、かなり見事なもの。特にこの三つの流れが一点に収束していくラストは圧巻。クイズの最終問題が時間の都合で翌日の生放送に先送りされること。そしてなによりも『クイズ$ミリオネア』のルールそのものが。全ての伏線がその瞬間につながっている。
この映画は、貧困の実情を描く社会派映画のようでいて、実はラヴストーリーであり、『夢』の物語だ。
『クイズ$ミリオネア』に象徴される夢。それは、忘れてしまいたいけれど、忘れられないこと。そんなことを一時だけ、『忘れさせてくれる夢』。
そしてもう一つの、ジャマールの夢。『忘れさせてくれる夢』を見る人々が、忘れてしまったこと。本当は忘れたくなかったのに、どこかに無くしてしまったこと。それを絶対諦めない。それを持ち続けるためなら、人々の夢の舞台『クイズ$ミリオネア』でさえも踏み台にする。そんなしたたかで強い夢。彼の夢は夢の中でなく、いつも現実の中にある。
『絶対、忘れない』
忘れないことは夢。夢は忘れないこと。
#213
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- マグニフィセント・セブン(2017.02.18)
- ザ・コンサルタント(2017.01.28)
- 本能寺ホテル(2017.01.23)
- アンダーワールド ブラッド・ウォーズ(2017.01.09)
- Year 2016(2016.12.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント